月極駐車場の管理責任とトラブルを予防するためにやるべきこと
2024.06.04
月極駐車場を運営していると、思わぬトラブルが発生することがあります。
利用者などから貸主としての責任を問われる可能性もあるため、月極駐車場のオーナーや管理会社の方は、管理責任や責任範囲について理解しておくことが重要です。
本記事では、月極駐車場における貸主の管理責任や、トラブルごとの責任範囲を解説します。併せて、適切な管理責任を果たすために貸主がすべきことも紹介するので、参考にしてください。
月極駐車場における貸主の管理責任とは
月極駐車場の利用者(借主)は、オーナーや管理会社(貸主)と賃貸借契約を結び、毎月の賃料を支払います。
民法第601条(賃貸借)によれば、借主から受け取る賃料の対価として、貸主には「借主に貸し出すものを問題なく使えるようにする」義務があります。したがって、他人の無断駐車や設備の故障など、借主が月極駐車場を利用できなくなるトラブルを予防・排除するのは、貸主の管理責任です。
月極駐車場は、コンビニエンスストアやショッピングセンターの駐車場のように、不特定多数の人・車が通行する場所ではないため、基本的には道路交通法が適用されません。道路交通法が適用されないと警察の管轄外となることから、トラブルが発生した場合は、加害者・被害者・貸主で対応することになります。
ただし、トラブルの内容によって貸主の責任範囲は異なります。次章で詳しく見てみましょう。
月極駐車場の管理責任と責任範囲
ここでは、月極駐車場内で起こり得る2つのトラブルについて、オーナーや管理会社の責任範囲、求められる対応を解説します。
車両窃盗に対する管理責任
車両の盗難や車上荒らし、置き引きなどの窃盗行為は、刑法上の窃盗罪として扱われるため、警察が対応します。そして、損害の賠償責任は、窃盗の加害者が負わなければなりません。
しかし、加害者が見つからない場合、被害者は月極駐車場の貸主の責任を問う可能性があります。注意すべきは、次のようなケースです。
(例)
- 防犯設備が充実していることをアピールポイントにしていたのにも関わらず、月極駐車場内の監視カメラがダミーまたは故障していた
- 駐車場利用者の鍵を預かって保管する「寄託契約」を結んでいた
①のケースでは、防犯設備の充実は「虚偽」だったと判断され、貸主が責任を問われるかもしれません。
また、②のケースでは貸主に「善管注意義務」があるため、一般的に想定される程度の注意を払うことが求められます。貸主が保管していたはずの鍵を使って窃盗が行なわれたのなら、注意が不十分だったと考えられるでしょう。
上記のように、窃盗の原因が駐車場の管理体制などにあると考えられるときは、貸主が責任を負う必要があります。
駐車場内の事故に対する管理責任
交通事故の加害者は、「不法行為」の責任を負います。不法行為の損害賠償について定めている民法第709条には、「故意や過失によって他人の権利・利益を侵害した人は、損害の賠償責任を負う」という趣旨の文言があります。
民法第709条に則ると、月極駐車場の敷地内で発生した事故も、損害の賠償責任は事故を起こした加害者にあると考えられるでしょう。したがって、原則トラブルは事故の当事者間で解決しなければなりません。
ただし、事故の原因が駐車場の管理状態にあると考えられる場合は、月極駐車場の貸主が責任を負わなければならないケースもあります。具体的には、次のようなケースです。
(例)
- 敷地のフェンスや柵が破損していたため、近くを通行する際に車体に傷が付いた
- 出入口の見通しが悪いにも関わらず、ミラーなどを設置されていなかったため、車同士が接触した
- 駐車場内の車止めの位置がズレていることで、後方にとめてあった車に追突した
月極駐車場内に看板を立てるのは有効?
貸主側の管理責任を回避するため、「当駐車場内で発生した事故やトラブルに関しては、一切責任を負いません」などと書いた看板を設置している月極駐車場もあります。
しかし、上記のような看板には、法的な拘束力はないとされています。看板を設置していたとしても、駐車場の管理状態や契約内容によっては、貸主の責任が問われることがあるためです。
さらに、月極駐車場の貸主は、利用者である借主と賃貸借契約を締結して賃料を徴収していることから、消費者契約法も関係します。消費者契約法第10条では、借主が貸主から一方的に不利な契約を強いられたとみなし、無効を主張できるという考え方が一般的です。
月極駐車場の管理責任としてやるべきこと
最後に、月極駐車場のオーナーや管理会社が、適切な管理責任を果たすためにすべきことを3点解説します。
契約時に十分な説明を行なう
月極駐車場の利用者のなかには、「毎月賃料を支払っているのだから、駐車場に関することはすべてオーナー・管理会社が対応してくれる」と考えている方もいるでしょう。そういった場合、実際にはオーナーや管理会社の責任範囲外の事案でも、「なぜ何もしてくれないのか」と疑問や不満を抱くかもしれません。
月極駐車場の契約に関して、双方の認識のズレをなくすためには、貸主の責任範囲を賃貸借契約書に明記することが大切です。併せて、契約時に貸主の免責事項をしっかりと説明し、理解してもらう必要があります。
駐車場の設備を定期的に確認する
月極駐車場を定期的に巡回し、駐車場内の異常や設備の故障などがないかチェックしましょう。問題がある場合は、早急に対処してください。
また、トラブルの発生を未然に防ぐために、利用マナーに関する注意喚起や無断駐車を禁じる旨などの看板を設置するとよいでしょう。防犯灯や防犯カメラなどを設置して、防犯対策に努めることも重要です。
保険に加入する
万が一の事態に備えて、貸主は「施設賠償責任保険」に加入しましょう。施設賠償責任保険は、貸主に科せられた損害金を補償する保険で、駐車場の欠陥や不備が原因で利用者などに損害を与えた場合に支払われます。
補償対象となるのは、次のような費用です。
(例)
- 駐車場利用者や近隣住民の応急処置費
- 駐車場利用者や近隣住民の治療費
- 駐車場利用者の車の修理費
施設賠償責任保険は上記のように、被害者に対する費用を補償する保険のため、自分の駐車場設備の修繕費などは補償されません。
駐車場設備に対しても備えておきたいなら、動産総合保険や機械保険に加入すると安心です。また、アパートやマンションなどの建物に付帯している月極駐車場の場合は、火災保険にも加入できます。
まとめ
他人の無断駐車や設備の故障など、借主が月極駐車場を利用できなくなるトラブルを予防・排除することは、貸主であるオーナーや管理会社の責任です。月極駐車場内で窃盗や事故が発生した場合も、原因が管理状態にあると判断されれば、貸主の管理責任が問われます。
トラブルを防ぐためには、貸主の責任範囲を賃貸借契約書に明記するとともに、契約時に十分な説明を行なう必要があります。併せて、駐車場設備の状態を定期的に確認し、保険への加入も検討しましょう。
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